Letter 細胞:電位依存性陰イオンチャネルがかかわり、RAS-RAF-MEKに依存する酸化的細胞死 2007年6月14日 Nature 447, 7146 doi: 10.1038/nature05859 正常細胞と腫瘍細胞の遺伝的構成を弁別して作用する薬剤は、癌の治療にも、癌の解明にも有用である。癌遺伝子選択的に致死作用を示す低分子化合物が見つかれば、癌タンパク質の未知の機能を明らかにし、より選択性の高い薬剤が作られるかもしれない。今回我々は、選択的な抗癌剤エラスティン(erastin)の作用機構に、細胞の増殖、分化、生存にかかわるRAS-RAF-MEKシグナル伝達経路が関係することを報告する。エラスティンは癌遺伝子HRAS、KRAS、BRAFに変異をもつヒト腫瘍細胞に対して、より強力な致死作用を示す。アフィニティー精製と質量分析により、エラスティンがミトコンドリアの電位依存性陰イオンチャネル(VDAC)を介して作用することがわかった。このチャネルは、抗癌剤の新しい標的である。発癌性RASをもつ細胞にエラスティンを投与すると、酸化種分子が発生し、アポトーシスとは異なる酸化的機構によって細胞死に至る。RNA干渉によってVDAC2やVDAC3をノックダウンするとエラスティンに対して耐性が生じ、この2つのVDACアイソフォームがエラスティンの作用機構にかかわることが明らかになった。また、1種類のVDACアイソフォームを発現するミトコンドリアを精製して用いて、エラスティンがミトコンドリア外膜の透過性を変化させることを見いだした。さらに、放射性標識類似体とフィルター結合法により、エラスティンが直接VDAC2に結合することも明らかにする。これらの知見から、RAS-RAF-MEK経路に活性化変異をもつ一部の腫瘍細胞で、VDACのリガンドが選択的に非アポトーシス性細胞死を引き起こすことが実証される。 Full Text PDF 目次へ戻る