Letter 生理:HDAC6は神経の変性を救済し、自食作用とUPSとを結び付ける重要な役割をする 2007年6月14日 Nature 447, 7146 doi: 10.1038/nature05853 遅発型神経変性疾患の目立った特徴の1つは、損傷を受けやすい位置にあるニューロンに誤って折りたたまれた異常タンパク質が蓄積することである。こうしたタンパク質の量が分解経路の能力を大きく超えると、細胞毒性が生じ、神経の変性が起こる。誤って折りたたまれたタンパク質を分解する細胞機構には、リソソームを介さずにユビキチン化されたタンパク質を分解する主要経路であるユビキチン-プロテアソーム系(UPS)と、リソソームを介した分解経路である自食作用がある。UPSと自食作用は反応経路が全く相交わることのない相補的な分解系である、と長い間考えられてきた。しかし、2つの経路に見かけ上関連があることを示唆する2つの観察結果が得られて、この見方の正当性が疑われるようになった。すなわち、in vitroではUPSの障害によって自食作用が誘導され、また、マウスの脳で自食作用をコンディショナルノックアウトするとユビキチン陽性タンパク質が蓄積して神経変性が起こる。自食作用が完全にUPSと並列の分解系なのか、それともUPSに障害があったときに補償的に働く分解系なのかはわかっていない。また、もしこれら2つの系の間に補償的な関係があるとした場合、その間を結び付けている分子が何かも不明である。今回我々は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を使い、UPSに障害があったときに自食作用が補償的な分解系として働くことを明らかにし、ポリユビキチン化タンパク質と結合する微小管関連デアセチラーゼであるヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)が、この補償的相互作用に不可欠な、2つの系を結び付ける機構となっていることを示す。神経変性疾患である球脊髄性筋萎縮症のショウジョウバエモデルでは、プロテアソームに影響する変異やUPSの障害に応じて補償的な自食作用が誘導されることがわかった。自食作用は損なわれたUPSの機能を補償し、この働きはHDAC6に依存する。また、in vivoでのUPSの機能不全に関連する神経変性を自食作用に依存して救済するのには、HDAC6の発現だけで十分である。これらの知見は、自食作用に障害(例えば、加齢や遺伝的変異に伴って起こる)が生じると、神経変性を起こしやすくなる可能性を示唆している。また、HDAC6を補って自食作用を促進することによる神経変性への介入の可能性も、今回の研究から考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る