ヒト細胞では、DNA損傷部位をバイパスするために特殊なDNAポリメラーゼ(DNA pol)を必要とする。補助因子が重要な役割を果たすことはわかっているが、これまでのところ、その詳細はほとんど解明されていない。今回我々は、in vitroでの異なるDNA損傷バイパスの際に、ヒト増殖細胞核抗原(PCNA)と複製タンパク質A(RP-A)が6種類のヒトDNA pol(B、Y、X型に属する)に及ぼす効果について分析した。変異誘発性の損傷である8-オキソグアニン(8-oxo-G)は、遺伝情報の誤りにつながる可能性が高い。PCNAとRP-Aは、主としてDNA pol λとηによる8-oxo-Gのバイパスに対して特異的な効果を示すことがわかった。PCNAとRP-Aの働きで、鋳型の8-oxo-Gに対して正しくdCTPが取り込まれるようになり、その効率は、DNA pol λ、DNA pol ηによって誤ってdATPが取り込まれた場合の効率に比べて、それぞれ1,200倍、68倍も高くなる。DNA pol λヌル細胞抽出物を使った実験から、DNA pol λが重要な役割をもつことがわかった。一方、DNA pol ιは、DNA pol α、δ、βと同じく、正しくバイパスする効率がずっと低かった。今回の知見から、酸化的損傷の有害な影響を軽減するための精密な機構が存在することが明らかになり、また、PCNAとRP-Aが、損傷バイパスの際に異なるDNA polの機能の序列付けにも重要な役割を果たしていることが示された。