腫瘍に発現している、活性化NKG2D(natural killer group 2, member D;別称、KLRK1)受容体リガンドは、遺伝毒性や細胞のストレスによって誘発され、ナチュラルキラー細胞の活性化やエフェクターT細胞の補助刺激を引き起こし、その結果、癌に対する抵抗性を増進させると考えられている。しかしながら、ヒトの多くの進行性腫瘍は、この抗腫瘍活性に対して、可溶性の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI関連リガンドであるMICAを分泌して、NKG2Dの細胞内取り込みおよび分解を誘導し、通常は数の少ない、負の制御作用を有するNKG2D+CD4+T細胞集団を増加させることで対抗する。本論文では、腫瘍細胞の表面で、MICAがendoplasmic reticulum protein 5(ERp5;別名、PDIA6またはP5)と会合することを示す。このERp5はタンパク質であるジスルフィドイソメラーゼに類似し、通常は細胞内の新生タンパク質の折りたたみにかかわっている。チオ還元酵素活性の薬理学的阻害やERp5遺伝子のサイレンシングによって、MICAの分泌には細胞表面でERp5が働く必要があることが明らかにされた。ERp5と膜結合型MICAは一時的に混合ジスルフィド複合体を形成し、それが細胞膜近傍でタンパク質分解による切断を受けて可溶性MICAが放出される。MICAの膜近位のα3ドメインにあって、接近が不可能に思われるジスルフィド結合の還元が、タンパク質の切断を可能にする大規模なコンホメーション変化にかかわっていると考えられる。これらの結果は、ドメイン特異的な構造変化がMICAタンパク質の分泌を制御しており、その結果、腫瘍細胞による免疫回避が促進されるという分子機構を明らかにするとともに、細胞表面のERp5が治療介入の戦略的標的になることを示すものである。