Letter

細胞:RNAを鋳型とするDNA修復

Nature 447, 7142 doi: 10.1038/nature05720

レトロウイルスやレトロトランスポゾンによる逆転写やテロメアの伸長の際には、RNAはDNA合成の鋳型になることができる。RNAは核に豊富にあるが、これが染色体DNAの損傷の修復に鋳型として直接かかわるという証拠は全く得られていない。染色体DNA損傷の一種であるDNA二本鎖切断(DSB)は、ほとんどの生物で、相同組み換えや非相同的末端再結合によって修復される。DNA修復へのRNAの間接的な関与の一例は、逆転写と相補的DNA形成後の、DSB末端の非相同的再結合の際に観察されている。相同組み換えが効率よく起こる出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、RNAが組み換えにかかわることが明らかになっている。ただし、これは、細胞質のTy粒子中でTyレトロトランスポゾンの逆転写酵素の働きによって生じるcDNA中間体を介した、間接的な関与である。二本鎖DNAと一本鎖(ss)RNAとの対合はin vitroでもin vivoでも起こりうるが、RNA分子とDNA分子の間での遺伝情報の直接的な相同的交換は観察されていない。今回我々は、酵母染色体のDSB修復の際に、RNAがDNA合成の鋳型として働きうることを明らかにする。修復は、切断末端に相補的なRNAオリゴヌクレオチドによって行われた。今回の知見と、酵母のDNAポリメラーゼα、δといった複製型DNAポリメラーゼでもin vitroで短いRNA鋳型をコピーできるという観察結果から、RNAがin vivoで、染色体DNAとの直接の相同的相互作用を介して遺伝情報を伝達できることが示される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度