Letter

医学:上皮のNEMOは自然免疫と慢性腸炎とを結びつける

Nature 446, 7135 doi: 10.1038/nature05698

腸の免疫応答における調節障害は、炎症性腸疾患の発症に主要な役割を果たすと考えられる。腸上皮は腸管腔内の細菌と免疫細胞とを隔てる物理的障壁となり、抗菌ペプチドを発現していて、腸の免疫恒常性の維持に極めて大きく関与している。しかし、腸上皮細胞がこの機能を調節する分子的機序は、ほとんど解明されていない。本論文では、炎症誘発性応答における主要な調節因子である転写因子NF-κBが、腸上皮細胞で上皮の正常な構造および粘膜免疫系と腸内微生物叢の間の相互作用を調節する機能をもつことを示す。マウスで、NEMO(IκBキナーゼγ(IKKγ)とも呼ばれる)の条件的除去、またはNF-κBの活性化に必須なIKKのサブユニットIKK1(IKKα)およびIKK2(IKKβ)の両者の条件的除去により、腸上皮細胞特異的にNF-κBを阻害すると、重度の慢性的腸炎が自然発生した。NF-κBの欠損は、結腸上皮細胞のアポトーシス、抗菌ペプチドの発現障害、および粘膜内への細菌の侵入を引き起こす。上皮のこうした欠陥は同時に、結腸で慢性的な炎症反応を引き起こし、これは最初は自然免疫細胞を主体とするが、後にTリンパ球も関与するようになる。アダプタータンパク質MyD88をコードする遺伝子の欠失は腸での炎症発生を防止し、これはこのマウスモデルの病因に、腸内細菌によるToll様受容体の活性化が重要であることを示している。さらに、NEMOの欠損が上皮細胞が腫瘍壊死因子(TNF)によって誘発されるアポトーシスを起こしやすくする一方で、TNF受容体-1の不活性化が腸の炎症を抑制したことは、発症にTNF受容体-1シグナル伝達が極めて重要であることを立証している。これらの知見は、腸上皮細胞でのNF-κBシグナル伝達の直接的な障害が胃腸管の免疫恒常性を破壊し、炎症性腸疾患に似た表現型の原因となること明らかにしている。今回の結果は、腸上皮でのNF-κBシグナル伝達が上皮の正常な構造と腸の免疫恒常性の極めて重要な調節因子であることを明らかにし、また、ヒトの炎症性腸疾患の発症を制御する機序の解明に重要なかかわりをもっている。

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