Letter 化学:キラル重水素化ネオペンタンの絶対立体配置 2007年3月29日 Nature 446, 7135 doi: 10.1038/nature05653 巨視的なキラリティーと分子レベルのキラリティーとの間の関係は、1951年にX線異常散乱法を使って明確なものとされた。この手法は、分子の絶対立体配置を決定する最も信頼性の高い方法となったが、この手法には重要な制約が1つあり、それは対象とする分子が「重い」原子(例えば臭素)を含んでいなければならないことである。最近、分子の振動光学活性を測定することによって、多様な分子の絶対立体配置の直接決定が可能になった。今回我々は、ラマン光学活性の計測技術の進歩と量子化学計算を組み合わせることで、(R)-[2H1, 2H2, 2H3]ネオペンタンの絶対立体配置の決定が可能となることを示す。この飽和炭化水素は、非対称な質量分布の結果キラルとなる分子すべての典型といえる。この分子は化学的に不活性なため、親化合物の絶対立体配置を解明しうる誘導体分子を生成することができない。よく知られたブロモクロロフルオロメタンの場合とは異なり、他の分子とのジアステレオマー相互作用、旋光、円二色性は測定できないと予想される。真空紫外領域での円二色性における振電効果によれば、その分子がキラルであることが明らかになるかもしれないが、回転異性体が9個存在するため、スペクトルの解釈が極めて困難になると思われる。それは回転異性体の原子核の空間配置がエナンチオマーのものと似ているためである。したがって、(R)-[2H1, 2H2, 2H3]ネオペンタンの絶対立体配置の分光学的決定は、可能性の限界に近い難問だったのである。 Full Text PDF 目次へ戻る