Letter 進化:食肉類と齧歯類の歯列にみられる高レベルの類似性 2007年1月4日 Nature 445, 7123 doi: 10.1038/nature05433 哺乳類の進化の研究は、歯の進化や、歯の形状と食餌との関連性の解明に大きく依存している。歯の肉眼的形状、機能、食餌の3者間の関連性は、古くはアリストテレスからキュビエ、オーウェン、オズボーンに至る人々によって提唱されてきた。しかしこれまで、大きく異なる歯の形状を網羅的・定量的に比較解析できる可能性は限られていた。例えばネコの歯とマウスの歯は、数千万年をかけて独立に進化して変化を遂げた結果、形状も構造も根本的に異なっている。両者の歯の構成要素間に相同性を見いだしたり、両者の歯の形状を要約したりするのは困難だが、食肉類と齧歯類は、動物食から植物食までの食餌特性のスペクトルが類似している。今回我々は、相同性を使わない新しい手法により、歯冠の三次元形状における表現型の複雑さを測定した。食肉類と齧歯類の計81種から得た441本の歯に地理情報システム(GIS)解析を施したところ、歯冠の表面の複雑さは食餌の内容を直接的に反映していることが明らかになった。さらに、食餌の内容で分けた集団それぞれにおける歯の複雑さの絶対値は、食肉類と齧歯類の間で一致しており、このことから、歯の特定の構成要素に低レベルの類似性がみられなくても、全体的な歯の形状の間には高レベルの類似性がみられることがわかる。これらの結果から、サイズや生態や生活史が広く分岐している複数の系統で、スケール非依存的に働く力が高レベルの歯の形状を決定してきたことが示唆される。食餌と表現型の間にあるこの関連性は、絶滅種の生態を推論するうえで有用であり、また、表現型の高速スループット・高レベル解析の可能性を示すものである。 Full Text PDF 目次へ戻る