Letter

細胞:ショウジョウバエのファゴソームのシステム生物学的解析

Nature 445, 7123 doi: 10.1038/nature05380

食細胞は、胚発生の際に組織の再編に重要な役割を果たし、それ以降は免疫防御の中心的なエフェクターとして働く。食作用では粒子が「ファゴソーム」とよばれる細胞小器官に取り込まれ、ここから微生物の破壊や抗原提示といった免疫過程が始まる。ある種の病原体は免疫系から逃れるための仕組みを進化させて、食細胞中でも検出されずに生き延びる。したがって、自然免疫や獲得免疫のさまざまな側面を理解するには、この過程の詳細な解明が極めて重要であることは明らかである。しかし、ファゴソームが免疫に果たす役割の重大さにもかかわらず、ファゴソームの成分や構造は完全には解明されていない。今回我々は、遺伝学的に扱いやすいモデル生物であるキイロショウジョウバエの細胞からファゴソームを単離し、システム生物学的解析を行って、ファゴソーム内でのタンパク質の複雑で動的な相互作用を調べ、粒子の貪食にこれらがどうかかわるかを解明した。プロテオミクス解析により、ショウジョウバエのファゴソームに関係する可能性のあるタンパク質が617個見つかった。これらは相互作用によって結びつき、「ファゴソームインターラクトーム(この細胞内区画の内部に存在する詳細なタンパク質間相互作用ネットワーク)」を作る。これらのネットワークから、ファゴソームの物理的構造と生物モジュールが推定される。各タンパク質、複合体が微生物の取り込みにどう寄与するかをRNA干渉により調べ、食作用装置の既知成分を同定した。また、「エキソシスト(exocyst)」などの食作用調節因子群が予測され、確認されたことで、今回の方法の有効性が確認された。エキソシストは、エキソサイトーシスに必要な巨大分子複合体で、これまでは食作用には関係するとされていなかった。この「システム生物学に基づくモデル」の作成で、このようなやり方が、複雑な細胞過程や小器官の研究に威力を発揮することがわかり、この詳細なファゴソームモデルは、宿主と病原体の相互作用や自然免疫研究の新しい基盤となると期待される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度