Letter 暁新世/始新世境界温暖極大期の地球温暖化における北極域の水文学 2006年8月10日 Nature 442, 7103 doi: 10.1038/nature05043 "暁新世/始新世境界温暖極大期は、5,500万年前に急激に進んだ極端な地球温暖化のことであり、これは既に温暖だった世界で起こった。この温暖化では、海洋の方解石補償深度が著しく浅くなり、海成炭酸塩と土壌中の炭酸塩の炭素同位体比は2.5パーミルの大きな負へのシフトがみられる。これらの観測事実は、13Cに乏しい炭素が大量に放出されて、温室効果ガスによる温暖化を引き起こしたことを示している。最近、北極海中央部から堆積物が採取され、この時代の北極で起きた環境変動を評価する初めての機会となった。今回我々は、表面水塩分や降水などの水文学的変化と全球炭素循環を記録している、陸上(植物)由来と水中由来のn-アルカンの水素と炭素の安定同位体比の測定結果を示す。水素同位体比記録は、暁新世/始新世境界温暖極大期の開始時に、低緯度から水蒸気が輸送される間のレインアウトが減少し、北極域への水蒸気の供給が増加したことを証拠だてているものと解釈される。この解釈は、地球温暖化の期間に、低気圧の移動経路が高緯度側に移動するという予測と矛盾しない。陸生植物の炭素同位体比の急変(およそ-4.5〜-6パーミル)は海成炭酸塩のそれより十分に大きい。かつて、このずれは地表面の湿度上昇に対する植物の生理的反応によると説明されていた。しかし、このような湿潤な北極の環境においてはこの機構は有力な説明とならず、炭素同位体比急変の実際の規模と、それに伴う炭素の取り込みは、当初推測されていたよりも大きかったと考えられる。炭素のより大規模な放出と強力な水文学的循環によるフィードバックによって、この前例のない高温暖期は維持されてきたのかもしれない。" Full Text PDF 目次へ戻る