Letter ダーウィンフィンチにおけるカルモジュリン経路と伸長型のくちばし形態の進化 2006年8月3日 Nature 442, 7102 doi: 10.1038/nature04843 自然選択下での適応放散として古くから典型例とされているものの1つに、ごく近縁な14種のダーウィンフィンチ(スズメ目アトリ科)の進化がある。これらの種間にみられるいちばんの多様性は、くちばしのサイズと形状である。すなわち、ガラパゴスフィンチ類のくちばしは上下幅と左右幅が共に広いが、サボテンフィンチ類では前後に長くて先が尖っており(上下幅が小さく左右幅が狭い)、ムシクイフィンチ類では細長くて先が尖っていて、それぞれの食餌の違いを反映している。これまでの研究から、くちばしのサイズの主要な3つの次元(上下、左右、前後)のいずれかにわずかの違いがあっても、その鳥の包括的適応度に大きく影響することがわかっている。我々は最近、候補遺伝子の解析から、ダーウィンフィンチのくちばしの形態に関与する1つの経路の説明づけを行った。しかし、この種の解析は、頭蓋顔面および(または)骨格の発達に関連することが知られる分子類に限られている。今回我々は、特定のくちばしの形態と発現が相関する未知の遺伝子や経路を見つけ出すため、前回の解析法に比べて対象の制限が少ない相補的DNAマイクロアレイ解析を用いて、くちばしの原基で発現している転写産物を調べた。Ca2+シグナル伝達に関与する分子であるカルモジュリン(CaM)は、サボテンフィンチ類の長くて先の尖ったくちばしでは、ほかの種の頑丈な型のくちばしに比べて発現レベルが高いことがわかった。この観察結果の妥当性は、in situハイブリッド形成法で確証された。このCaM依存性経路の上方調節をヒナの前頭鼻隆起で人為的に再現すると、上のくちばしの伸長が引き起こされ、サボテンフィンチ類のくちばし形態が再現される。今回の結果から、CaM依存性経路の局所的な上方調節が、伸長型のくちばし形態をもつダーウィンフィンチ種の進化の一要因である可能性が高いことが示され、また、異なる軸方向へのくちばしの進化の独立性が機構面から説明される。より一般的な解釈においては、我々の結果は、CaM依存性経路が頭蓋顔面の骨格構造の発生制御に関係していることを示唆するものである。 Full Text PDF 目次へ戻る