Letter

タンパク質の全体的なダウンヒルフォールディングの原子ごとの解析

Nature 442, 7100 doi: 10.1038/nature04859

タンパク質の折りたたみは、天然の3次元構造を安定化している弱い相互作用の込み入ったネットワークの調整にかかわる本質的に複雑な過程である。一般的には、単純な構造のタンパク質は、実験では解明できないような「全か無か」の過程により折りたたまると考えられている。このため、従来からある実験手法は折りたたみ機構を間接的に探るものとなってきている。広く使われている手法は、遺伝子工学的に導入した変異によって引き起こされるタンパク質の安定性や折りたたみの速度論的性質の変化を、タンパク質の本来の構造から解釈するというものだ。構造とエネルギー論の関係づけに制約があることに加え、変異導入法には大きな実験上の不確実性があり、また、相互作用の複雑なネットワークを描き出すことができない。これに対して解析理論では、折りたたみに至るエネルギー地形には複数の小さな障壁があり、ダウンヒルフォールディング(downhill folding、滑降経路による折りたたみ)が起こりうると予測している。近年これらの理論予測は、全体的なダウンヒルフォールディングの観察も含め、実験により確かめられた。しかし、ダウンヒルフォールディングが本当にタンパク質折りたたみ過程の高分解能解析につながるのかどうかは、未解決の重要な問題である。今回我々は核磁気共鳴(NMR)を用いて、ダウンヒルフォールディングを示す大腸菌のタンパク質BBLが、明確な3次元構造から1原子ずつほどけていくようすを示す。全部で204個のプロトンのうち、骨格および側鎖の158個がほどけていく際の熱的データから、折りたたみ中の構造変化の詳細な描像が得られる。この描像から折りたたみの統計的な性質が確認され、水素結合、疎水力、骨格のコンホメーション、側鎖のエントロピー間の相互作用が明らかになった。また、データからこのタンパク質の相互作用ネットワークのマップも得られ、それにより折りたたみにおける協同性が生じる原因も明らかになった。我々の手法は、折りたたみのエネルギー障壁が非常に低い(3RTより低い)ほかのタンパク質にも適用可能であり、タンパク質折りたたみ研究の新たなツールとなる。

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