Letter

アミノ酸触媒反応における不斉増幅の熱力学的制御

Nature 441, 7093 doi: 10.1038/nature04780

酒石酸結晶が、右手と左手のように互いに鏡像となる重ね合わすことのできない2つの形で存在することにパスツールが気づいて以来、キラリティー現象は科学者の興味を引き続けてきた。分子レベルでは、キラリティーは認識や相互作用に大きな影響を及ぼすことが多く、それゆえに生化学や薬理学にとって重要である。化学合成においては、生成物中に左手型か右手型のいずれかの鏡像異性体が大過剰となる不斉合成方法の開発に、多くの努力が注がれてきた。この不斉合成は通常、反応過程に影響を及ぼす不斉補助剤または触媒を用いることで実現され、生成物の鏡像体過剰率(ee)は使用された補助剤または触媒のeeと線形関係にある。しかし最近、この関係が非線形的となる不斉反応の報告が増えており、この非線形効果は不斉増幅を起こしうる。理論モデルからは、自己触媒プロセスによって動力学的に制御された不斉増幅が起こりうることがかねてから示唆されてきた。現在これは、自己触媒アルキル化に関して実験的に検証され、機構的に理にかなった予測となっている。今回我々は、溶液中でのアミノ酸の固液相平衡挙動を基に、不斉増幅を引き起こす別の機構を提示する。この増幅機構はしっかりしたもので、水溶液系で作用可能である。したがってこれは、最も興味をかきたてられる不斉増幅の一例、すなわちラセミ体からなると推定される生物出現以前の世界から生体分子における高い鏡像体過剰率が実現するに至ったことを説明づける、興味深い提案となる。

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