Letter 暁新世/始新世境界温暖極大期における亜熱帯北極海の温度 2006年6月1日 Nature 441, 7093 doi: 10.1038/nature04668 約5500万年前の暁新世/始新世境界温暖極大期には、温室効果ガスが大気中に大量に流入したことに伴い、極端な温暖化が広範囲にわたって短期間に起こった。結果として起こった環境変化の様子は、低緯度地域についてはよく調査されているが、同時期の北極域における変化を定量化できるデータは得られていなかった。本論文では、北極海掘削計画で得られた一連の海成堆積物に含まれる暁新世/始新世境界温暖極大期の特徴を明らかにする。北極付近の海面水温は、この期間中に約18〜23 ℃以上にまで上昇したことがわかった。このような高温下では氷は存在しなかったと思われるので、雪氷アルベドフィードバックの影響は除外される。また同じ時期に、海洋底層水で無酸素環境が、そして有光層では強還元性条件が形成される一方で、海面高度が上昇した。温度と海面高度の上昇は、古気候モデルを用いたシミュレーションに基づく予測と整合しているが、今回得られた極域温度の絶対値は、温度最大期の前、最中、後のいずれにおいても、モデルの予測値より10 ℃以上高かった。このことから、現在よりも高い温室効果ガスの濃度が、おそらく極成層圏雲やハリケーンによる海洋混合といったほかのフィードバック機構とあいまって、古第三紀初頭の極域の温度上昇を増幅していたのだろうと考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る