Letter 細胞のマイクロRNA/短鎖ヘアピンRNA経路の過飽和が原因で起こるマウスの死亡 2006年5月25日 Nature 441, 7092 doi: 10.1038/nature04791 RNA干渉(RNAi)は、普遍的で進化上保存されている転写後遺伝子サイレンシング現象で、低分子二本鎖RNAによって誘発される塩基配列特異的なmRNA分解によって起こる。in vivoでウイルスベクターや非ウイルスベクターによって標的に相補的な短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を発現させると、効率よくこの仕組みを働かせることができるので、RNAiは機能ゲノミクスやヒト疾患治療の分野で注目を集めている。今回我々は、成体マウスの肝臓で高レベルのshRNA発現が持続すると、どのような長期的影響がでるかを体系的に評価した。二本鎖DNAを含んだアデノ随伴ウイルス8型(AAV8)を用いた最適化shRNA送達ベクターを静脈注射すると、全肝細胞でshRNAが盛んに発現されるようになった。6つの標的を対象とした、長さや塩基配列が異なる49種類のAAV/shRNAベクターを調べたところ、36種類で投与量に依存した肝臓の損傷がみられ、そのうち23種類は最終的に死因となった。死亡には肝臓由来のマイクロRNA(miRNA)の発現低下が関係しており、さまざまな低分子RNAのプロセシングに必要とされる律速的な細胞因子について、shRNAとmiRNAが拮抗する可能性を示している。in vitroやin vivoでのshRNAトランスフェクション研究によって、shRNA経路とmiRNA経路に共通していて飽和しやすいこのような因子の1つが、核内カリオフェリンであるエクスポーチン-5であることが示された。動物やヒトでRNAiを用いる方法では細胞内のshRNA発現レベルの制御が必須であるため、今回の知見は今後の戦略に極めて重要な意味をもつ。しかし、shRNAの投与量と塩基配列の最適化により、内在性の低分子RNA経路が過飽和になる危険性を最少に抑えることは可能である。ここで報告するin vivoでヒトのB型肝炎ウイルスに対する持続的な治療効果をもつRNAiはその一例である。 Full Text PDF 目次へ戻る