Letter

ウミグモでのHox遺伝子発現により明らかになった節足動物の前方付属肢の相同性

Nature 441, 7092 doi: 10.1038/nature04591

節足動物の頭部体節は、進化の過程で形態がどのように多様化したかを理解するための格好の材料となる。これらの頭部体節から、形態的に多様な各種の付属肢が生じたからである。しかし、節足動物間でどの頭部体節が相同なのか、またどのような祖先型の体節配列からこれらの付属肢が派生したかについては長年にわたり議論が続いている。最近の研究によって、祖先型とされる頭部第1体節に付属肢をもつ体節配列は、従来考えられていたようにすべての現生節足動物で失われてしまったわけではなく、ウミグモ類(Pycnogonida)には残っているという提案がなされ、この頭部問題をめぐる議論が再燃した。この提案は、Anoplodactylus属のウミグモ種の幼生の神経構造解析に基づいたもので、最も前方の付属肢対である鋏肢(chelifore)が脳の最前方領域である前大脳から神経分布を受けているとするものであった。今回我々は、別のウミグモ種であるEndeis spinosaでHox遺伝子の発現を調べ、この仮説を否定する結果を得た。Hox遺伝子発現領域の前方境界の位置からすると、鋏肢付属肢は明らかに頭部第2体節に属しており、脳の第2領域である中大脳から神経分布を受けていることになる。中大脳は、ウミグモ類の祖先において、前大脳に向かって二次的に変位したと考えられる。真鋏角類(Euchelicerata)と大顎類(Mandibulata)というほかの2つの節足動物群でも最前方の付属肢は中大脳に支配されていることから、前大脳に支配される付属肢はすべての現生節足動物で失われていると結論される。

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