Letter 発生:Polycomb複合体はマウス胚性幹細胞の発生制御因子を抑制する 2006年5月18日 Nature 441, 7091 doi: 10.1038/nature04733 胚性幹細胞(ES細胞)が成体の事実上すべての細胞種へと分化する能力を維持しながらもその一方で自己複製を行う機構についてはよくわかっていない。Polycombグループ(PcG)のタンパク質は、後生動物の発生において、クロマチン構造のエピジェネティックな修飾を介して細胞の独自性の維持を助ける、転写抑制因子である。PcGタンパク質は初期胚発生に必須の役割を持ち、ES細胞の多分化能にかかわると考えられているが、哺乳類でのその標的遺伝子はほとんどわかっていない。本研究では、マウスのES細胞で、多数の発生制御因子をPcGタンパク質が直接抑制していることを示す。これらの制御因子は抑制がなければ発現して、分化が誘導されると考えられる。マウスES細胞の全ゲノム領域に対してPcGタンパク質の存在場所を調べた結果、Polycomb抑制複合体であるPRC1とPRC2が512個の遺伝子を共通の標的としており、それらの遺伝子の多くが発生に重要な役割をもつ転写因子をコードしていることがわかった。共通の標的であるこれらの遺伝子はいずれも、修飾されたヌクレオソーム(ヒストンH3のトリメチル化されたリジン27)を含んでいた。ES細胞での遺伝子サイレンシングを引き起こすことと、PRC2構成因子のEedを欠失した細胞でPcGの標的遺伝子の抑制が解除され、分化誘導に際して優先的に活性化されたことは矛盾しない。今回の結果から、Polycomb複合体による発生経路の動的な抑制は、ES細胞の多分化能維持と胚発生の間の可塑性維持に必要なのではないかと考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る