Letter 医学:p110αホスホイノシチド-3-OHキナーゼが成長と代謝の制御に果たす重要な役割 2006年5月18日 Nature 441, 7091 doi: 10.1038/nature04694 哺乳類のホスホイノシチド-3-OHキナーゼ(PI(3)K)ファミリーの8個の触媒サブユニットは、進化の過程で保存されてきたシグナル伝達経路の主軸をなしているが、PI(3)Kアイソフォームのほとんどについては、生物体の生理や病理にどのような役割を果たすのかはわかっていない。今回我々は、チロシンキナーゼとRasシグナル伝達系にかかわり、遍在的に発現しているPI(3)Kであるp110αの役割を解明するため、p110αのキナーゼ活性を失わせるノックイン変異(D933A)をもつマウスを作出した。キナーゼ活性を失ったp110αをホモ接合でもつマウスは、胚の段階で死亡する。この変異のヘテロ接合マウスは生存可能で繁殖力もあるが、インスリン受容体基質(IRS)タンパク質を介したシグナル伝達が著しく鈍化する。IRSタンパク質はインスリンやインスリン様増殖因子-1、レプチンなどの作用を伝える重要なメディエーターであり、D933A変異をヘテロ接合でもつマウスでは、これらのホルモンへの応答性の欠陥が、身体の成長の抑制、高インスリン血症、耐糖能低下、過食症、体脂肪蓄積亢進などに結びつく。p110αのこのようなシグナル伝達機能は、広範に発現するもう1つのPI(3)Kアイソフォームであるp110βに比べて、非常に選択的にIRS情報伝達複合体のところへと運ばれて活性化することによっている。p110βは、IRSに関係したPI(3)K活性には寄与しなかった。一方、p110αはがん細胞系列にみられる主要なIRS関連PI(3)Kであった。これらの知見は、p110αが増殖因子シグナル伝達系や代謝シグナル伝達系で非常に重要な役割を果していることを示しており、さまざまながんでp110αの選択的な変異や過剰発現がみられる理由の説明にもなっている。 Full Text PDF 目次へ戻る