細胞の成長、すなわち質量と大きさの増加は、高度に制御された細胞現象である。Akt/mTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達経路は、タンパク質合成の制御、ひいては細胞や組織、個体の成長の制御において中心的な役割を果たしている。損傷に応じて起こる組織の修復などは、急激な細胞の成長を必要とする生理的状況の顕著な例である。今回我々は、傷ついた重層上皮で急激に誘導されるケラチン17という中間径フィラメントタンパク質が、アダプタータンパク質14-3-3σとの結合を介して細胞の成長を制御することを明らかにする。ケラチン17をもたないマウスの皮膚のケラチノサイトではタンパク質の翻訳が抑制されていて、それ自体のサイズも小さく、Akt/mTORシグナル伝達の活性低下と相関していた。ほかのシグナル伝達キナーゼ類の活性が正常であることは、この異常の特異性を示している。14-3-3σを血清依存的に核から細胞質へと移動させ、mTOR活性と細胞の成長を同時に刺激するには、ケラチン17のアミノ末端頭部ドメイン中にある2個のアミノ酸残基が必要である。これらの知見から、細胞骨格の中間径フィラメントには、タンパク質合成を調節することによって細胞の成長とサイズを左右するという予想外の新しい役割があることがわかった。