Letter 化学:二次元鏡像格子におけるキラリティーの増幅 2006年1月26日 Nature 439, 7075 doi: 10.1038/nature04419 キラリティーの概念は、パスツールが酒石酸アンモニウムナトリウムの右旋性結晶と左旋性結晶とを手作業で選り分けた1848年にさかのぼる。結晶化は今もなおキラル分子を2つの異なる鏡像異性体(エナンチオマー)に分離する重要な手段であるが、依然として解明が進んでいない。例えば、特定の1対のキラルパートナーが大半のキラル分子の挙動に従ってラセミ結晶として共に結晶化するのか、別々のエナンチオマーとして結晶化するのかを予測する確固たる法則はない。この現象をやや単純化して扱いやすくしたのが、吸着分子による表面構造の形成といった、二次元の結晶化である。こうした系は分子の空間的配列が比較的単純なので、特定のキラル相互作用の影響が、より容易に研究できる。さらに、キラル集合過程およびキラル認識過程を、走査型トンネル顕微鏡法によって分子分解能で直接観察できる。平面に限定することによりバルク結晶の対称要素の一部が除外されキラル相互作用が促進されるので、二次元ではキラル分子の鏡像異性体分離は起こりやすいと予想される。しかし、これまでに多くの表面構造はラセミ結晶であることが見いだされている。今回我々は、Cu(111)表面上にあるキラル炭化水素ヘプタヘリセンが、二次元上では自発的にエナンチオマーに分離することがないが、メゾスコピックスケールでは容易に増幅される鏡像異性を示すことを報告する。すなわち、重ね合わせることのできない鏡のような格子構造を持つラセミックなヘプタヘリセンのドメインが形成され、一方のヘプタヘリセン・エナンチオマーがやや多いともう一方のドメインタイプの形成が抑制されることが観察された。キラルモディファイヤーによるアキラルな鏡像単分子層におけるホモキラリティーの誘発と同じように、一方の鏡像異性体がやや多めに存在すれば、考えられる2つの重なり合わない鏡のような格子構造のうちの一方のみを持つドメインだけから単分子層全体を構成するのに十分である。 Full Text PDF 目次へ戻る