Article 生態:霊長類では警察行動が社会的ニッチの構築を安定化させる 2006年1月26日 Nature 439, 7075 doi: 10.1038/nature04326 すべての生物は、自身を取り巻く環境と相互作用することで環境を成形して、資源の利用可能性を改変している。この過程はニッチ構築と呼ばれ、主に生態レベルで世代を超えるニッチ構築の結果に重点を置いて研究されてきた。我々は、単一世代内でのニッチ構築の行動過程に注目し、社会的資源ネットワークもしくは社会的ニッチを形成する相互作用の促進に、「紛争管理」(conflict management)という一種のロバストシステムが役立っていることを見いだした。ブタオザル(Macaca nemestrina)の大規模飼育集団に対して「ノックアウト」実験(特定少数個体の一時的転出)を行ったところ、紛争に起因する長期の精神的動揺があった場合に、少数個体からなる小集団によってしばしば遂行される警察行動機能が、安定な社会的資源ネットワークを維持するのに大きく寄与していることがわかった。警察行動が存在しないと社会的ニッチは不安定になり、集団構成個体が作るグルーミングや遊び、接近(proximity)、密着座り(contact-sitting)の各種ネットワーク構造が、より小規模になり、多様性や集積度も低くなる。不安定性の定量化にあたっては、平均次数の減少、クラスター化の増大、リーチ(2段階までリンクするノードの数)の低減、次数類似ノード同士のリンク(assortativity)の増加から評価した。群居性の霊長類社会では、警察行動は紛争を抑えるだけでなく、重要な社会的資源を構成するネットワーク構造に大きな影響を及ぼすことがわかる。こうしたネットワークの構造は、幼少個体の生き残りや、協同的行動の発生・普及、社会的学習や文化的伝統に極めて重要な役割を果たしている。 Full Text PDF 目次へ戻る