Letter 疫学:同性間交配とバンクーバー島でのCryptococcus gattii大発生の原因 2005年10月27日 Nature 437, 7063 doi: 10.1038/nature04220 系統学から重要なヒト病原体の進化の経路が明らかになることがある。一部の微生物では、らい病を引き起こすらい菌(Mycobacterium leprae)の世界的な広まりなどに見られるように、厳密なクローン生殖が主な繁殖様式となっている。他の病原体においては、有性生殖により新たな特性を持ったクローンが生じる。寄生虫であるToxoplasma gondiiが効率のよい経口感染能をもつようになったのはその一例である。しかしながら、他の多くの病原微生物においては、大発生にクローン繁殖あるいは有性繁殖がどのような役割を持つかは明らかにされていない。最近カナダのバンクーバー島で見られたCryptococcus gattiiを原因とする真菌性髄膜脳炎の大発生もその一例である。本論文で我々は、このCryptococcus gattiiの大発生に関与する分離株は2つの 異なる遺伝子型からなることを示す。多数派の分離株は、病原性が非常に強く、パシフィックノースウェスト型特有の同一の遺伝子型を持つ。少数派の分離株は、顕著に病原性が弱く、組み換えを起こすオーストラリア株由来の生殖能のある分離株と同一の遺伝子型を示した。遺伝子型の解析により有性生殖の証拠が明らかになり、多数派の遺伝子型は予想された子孫であるとわかった。しかし多数派の大発生クローンは、古典的なa-α性周期ではなく、2つのα交配型の親から由来したようである。核内容物の解析により、二倍体環境分離株は多数派の遺伝子型のホモ接合体で、同性間交配時に生じる中間体であることが明らかとなった。これらの研究結果から、潜在的な同性交配がどのようにしてヒトの病原体を新たな地域的ニッチへと広げるのか、そして感染性胞子の継続的産生にどのように寄与するのかがわかる。このことは、他の微生物病原体の出現、および真菌界や他の生物界での宿主域拡大における同系交配に重要なかかわりがある。 Full Text PDF 目次へ戻る