Letter 進化:ウミグモの神経構造は前大脳体節にもともと付属肢があることを物語っている 2005年10月20日 Nature 437, 7062 doi: 10.1038/nature03984 節足動物の体節は独自の特殊化をとげており、個々の体節は側方の付属肢と中枢神経系の神経節を持っているのが基本型だが、形態的に多様であるため、体節の相同性に関しては100年以上にわたって議論が続いている。節足動物頭部の祖先型構成は、体節やそれに対応する付属肢があまりに多様なために謎に包まれたままである。現生節足動物の「綱」レベルの分類群内(鋏角類、多足類、甲殻類、そして昆虫を含む六脚類)で、付属肢のある第2(中大脳)および第3(後大脳)の脳神経分節どうしが対応することは、免疫組織化学やHox遺伝子発現パターンに基づいて最近明らかにされた。しかし、第1神経節にあたる前大脳に神経連絡する付属肢は見当たらず、この前方領域がどんな体節に対応するかは今もって明らかでない。幹種にあたる化石節足動物の復元像から、最前方領域には元来、前大脳によって神経支配される眼器官や前頭部付属肢があったのではないかと考えられている。しかし、現生節足動物における中枢神経系の研究でこの見方を直接確認できた例はまだなかった。ただし、昆虫の脳の遺伝子発現パターンを解析した最近の研究で、前大脳領域に体節状態が見られることが示唆されている。今回我々は、免疫組織化学の技術を用いて、節足動物の中でも非常に原始的だと思われているウミグモ類の発生過程の神経構造解析を行った。そして、その第1付属肢対である鋏肢[きょうし]が前大脳の前方部で神経連絡していることを示す。これは、前大脳に神経支配されていることがわかった初めての真の付属肢であり、したがってウミグモ類の鋏肢は現生節足動物の付属肢と位置的に相同ではなく、カンブリア紀にいたある種の化石節足動物の「大きな付属肢」と、実は相同なのかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る