Letter 細胞:LSD1はヒストンの転写抑制標識を脱メチル化してアンドロゲン受容体に依存した転写を促進する 2005年9月15日 Nature 437, 7057 doi: 10.1038/nature04020 真核生物の遺伝子調節には、アンドロゲン受容体のような特異的転写因子とクロマチン修飾タンパク質との協調のとれた相互作用が必要である。遺伝子の活性化と抑制は、ヒストン上の特定のリシン残基のメチル化状態によって特異的に調節されている。本論文では、リシン特異的脱メチル化酵素1(LSD1;BHC110ともよばれる)が正常なヒト前立腺と前立腺腫瘍の両方でアンドロゲン受容体と同じ場所に局在することを明らかにする。LSD1はアンドロゲン受容体とin vitroでもin vivoでも結合し、アンドロゲン受容体に依存した転写を促進する。これに対して、LSD1タンパク質濃度をノックダウンにより低下させると、アンドロゲンが引き起こす転写活性化と細胞増殖が起こらなくなる。クロマチンの免疫沈降分析によって、アンドロゲン受容体とLSD1がリガンドの有無に応じてクロマチンに結合した複合体を作ることが明らかになった。LSD1がヒストンH3のリシン9(H3-K9)を脱メチル化することによってヒストン上の転写抑制標識がなくなり、アンドロゲン受容体の標的遺伝子の抑制が解除される。また、パージリンがLSD1の阻害剤であることがわかった。パージリンは、LSD1によるH3-K9の脱メチル化とそれによって起こるアンドロゲン受容体依存性の転写を阻害する。したがってLSD1の活性調節は、アンドロゲン受容体の機能を制御する今まで知られていなかった方法といえる。これらの知見で、ヒストン上の転写抑制標識の脱メチル化とアンドロゲン受容体に依存した遺伝子活性化とのつながりが判明し、脱メチル化酵素が特定の遺伝子の発現を制御するしくみが明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る