Letter 神経:eIF2αキナーゼGCN2による海馬シナプス可塑性と記憶の翻訳性調節 2005年8月25日 Nature 436, 7054 doi: 10.1038/nature03897 さまざまな形のシナプス可塑性の研究から、メッセンジャーRNAの翻訳と学習や記憶の関連が示されている。記憶と同様シナプス可塑性にも、既存のタンパク質の修飾による早期相と、新規のタンパク質の転写と合成を必要とする後期相とがある。シナプス後標的細胞の活性化は、可塑性関連遺伝子群の転写を開始すると考えられる。新たに合成されたmRNAは、細胞体で翻訳されるか、シナプス部に運ばれてから翻訳される。このとき鍵となるタンパクキナーゼはGCN2で、翻訳の開始を調節する。この論文では、GCN2-/-マウスから作成した海馬切片の特異な性質を報告する。そのCA1領域では、1回の100 Hz連続刺激で強い持続的な長期増強(後期LTP)が生じ、これは転写と翻訳に依存していた。ところが、野生マウスの海馬切片で後期LTPを生じさせるような刺激、たとえば4回の100 Hz連続刺激やフォルスコリン投与は、GCN2-/-マウスの切片では、後期LTPを誘発できなかった。この異常なシナプス可塑性は、GCN2-/-マウスのモリス水迷路学習行動にも反映されており、弱い訓練の後の空間記憶は増強されたが、より強い訓練の後の成績はむしろ下がった。GCN2の活性化は、環状AMP応答エレメント結合タンパク(CREB)の阻害因子であるATF4のmRNA翻訳を促進する。したがって、GCN2-/-マウス海馬では、ATF4の発現が低下し、CREB活性は増強されている。今回の研究は、GCN2がシナプス可塑性と学習・記憶を、ATF4/CREB経路の調節を通じて制御していることについて、遺伝的、生理的、行動的、分子的な証拠を示すものである。 Full Text PDF 目次へ戻る