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医学:β-ラクタム抗生物質はグルタミン酸輸送体の発現を増加させて神経を保護する

Nature 433, 7021 doi: 10.1038/nature03180

グルタミン酸は神経系の主要な興奮性神経伝達物質である。シナプスでのグルタミン酸不活性化を担うのがグルタミン酸輸送体GLT1(EAAT2ともよばれる)で、生理的にアストログリアでは最も多いタンパク質である。正常、異常を問わずシナプスの活動にはGLT1がきわめて重要であるが、このタンパク質を正に調節する実用的薬剤は見つかっていない。このタンパク質が正常な興奮性シナプス伝達に重要であることは動物実験で明らかにされており、一方、その機能異常は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、卒中、脳腫瘍、てんかんなど、急性および慢性の神経疾患にかかわるとされている。今回我々は、FDAの認可を受けた1,040種類の薬剤と栄養食品を対象にブラインド・スクリーニングを行い、多くのβ-ラクタム抗生物質がGLT1の発現を強力に促進することを発見した。さらに、この作用はGLT1遺伝子転写の増加を介して起こるようである。β-ラクタムやその種々の半合成誘導体は、細菌の合成経路を阻害する強力な抗生物質である。β-ラクタムのセフトリアキソンを動物に投与すると、脳でのGLT1の発現が増加するとともに、GLT1の生化学的、機能的活性が上昇した。グルタミン酸輸送体は、グルタミン酸の神経毒性を防ぐうえで重要である。セフトリアキソンは、グルタミン酸の毒性が原因の1つになる虚血性損傷や運動神経の変性のin vitroモデルで用いると、神経を保護する作用を示す。致死性の疾患であるALSの動物モデルに投与すると、セフトリアキソンはニューロンの消失と筋力の低下を遅らせ、マウスの生存率を上昇させた。このように今回の研究で、遺伝子の活性化によって神経伝達物質であるグルタミン酸の輸送体の発現を調節する、新種の神経治療薬となりうる薬剤が明らかになった。

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