Letter

医学:1918年のスペイン風邪ウイルスの赤血球凝集素をもつA型インフルエンザウイルスに見られる毒性の増強

Nature 431, 7009 doi: 10.1038/nature02951

1918年から1919年にかけて世界的に流行した「スペイン風邪」(インフルエンザ)は、感染症の流行としては有史以来最悪のもので、少なくとも2,000万人が死亡した。特徴的だったのは、症状が非常に重く、しかも経過が非常に速かったことである。1918年の流行の原因となったインフルエンザウイルスのいくつかの遺伝子の塩基配列が完全に解読されたため、リバース・ジェネティクス法を用いてクローン化した相補的DNAだけから感染性ウイルスを人工合成し、これらの遺伝子がコードするタンパク質の機能を調べることが可能になった。そこで、1918年の世界的流行を起こしたA型ウイルス株のどのような性質がその異常に強い毒性に関連していたのかを調べるため、1918年のウイルス株の赤血球凝集素(HA)遺伝子やノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を持つウイルスを作成した。この株のHAは、マウス馴化型ウイルスがマウスにおいて病原性を発揮するのに必要である。今回我々は、マウスに対して病原性をもたない最近のヒトインフルエンザウイルスのHAを1918年のウイルスのHAに置き換えると、マウスに対して強い病原性を発揮するようになることを明らかにした。また、1918年ウイルスのHAを発現するこの強毒性組換えウイルスは、肺全体に感染して、1918年の大流行時に見られた特徴的な症状である炎症細胞の浸潤と重度の出血につながる、マクロファージ由来のケモカインやサイトカイン類の濃度上昇を引き起こした。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度