Letter 進化:多面発現は協同作用を安定化させる仕組として働く 2004年10月7日 Nature 431, 7009 doi: 10.1038/nature02894 大部分の遺伝子は複数の形質に影響を及ぼす。この現象は多面発現として知られ、進化に対する主要な制約要因となっている。というのは、1つの形質の適応的な変化は、同じ遺伝子の影響を受ける他の形質に不具合を生じさせるために妨げられることがあるからである。今回我々は、多面発現が予想外の作用を及ぼしうること、そして適応の中でも最も不可解なものの1つである協同作用にプラスに働くことを報告する。社会性をもつアメーバの1種、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)では、目覚ましい協同作用が見られる。一部の細胞が死んで柄を形作り、繁殖用の胞子となる他の細胞を高く持ち上げるのである。我々はこの菌で2つの相反する作用をもつ遺伝子dimAを同定した。この遺伝子は、柄細胞の前駆細胞への分化を起こすシグナル伝達分子DIF-1を受け取るのに必要とされる。DIF-1を受け取らず柄細胞の前駆細胞にならなければ、細胞は柄にならずにすみ、裏切りが可能になるはずである。ところが、野生型細胞を含む多細胞体ではdimA遺伝子がない細胞は胞子から排除されることがわかった。キイロタマホコリカビでは、柄細胞の前駆細胞の形成が損なわれると胞子がさらに大きく減少するため、柄形成と胞子形成の多面発現的な結びつきによって、裏切りの生じる可能性が制限されている。裏切りと私的コストとの多面発現的な結びつきが進化することで、協同作用的な適応が安定化する可能性があると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る