Letter 考古:古代エジプト王朝時代の動物のミイラに使われた複雑な有機化合物を含む芳香性樹脂 2004年9月16日 Nature 431, 7006 doi: 10.1038/nature02849 古代エジプトでは、哺乳類、鳥類、爬虫類の奉納用ミイラが数百万個以上も作られ、アメンホテプIII世(紀元前1400年)の治世以降、大いに流行した。その作製の規模から、人間のミイラほど大きな手間も費用もかけられていなかったとされている。一般的には、動物は生きたまま、きめの粗い麻の包帯でくるまれたり、あるいは樹脂などの液に浸されたりしただけであると考えられている。しかし、人間のミイラの作製と同様に処理の質はさまざまであり、また動物のミイラの観察から、用いられた手順が、人間のミイラ作製時と同じ程度に複雑であった可能性があることがわかる(例えば、内臓摘出と入念な包み方)。また古代エジプト人は動物を大切に扱い、ペットであると同時に神の使いであるともみなしていた。例えば、猫は女神バステトを、鷹はホルスを、トキはトトをそれぞれ象徴していた。本論文では、王朝時代からの猫、鷹、トキのミイラの組織および包帯を、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー−質量分析、熱脱離−ガスクロマトグラフィー−質量分析、熱分解ガスクロマトグラフィー−質量分析で化学的に調べた結果を報告する。解析の結果、脂肪、油脂、蜜蝋、シュガーガム、石油瀝青、および針葉樹やウルシ科のPistaciaとおそらくスギなどに由来する樹脂に特徴的なn-アルキル成分および環状バイオマーカー成分を含む非常に複雑な混合物が検出された。芳香性樹脂の混合物は、同時期の人間のミイラ作製に使用されたものと同じ程度に複雑である。 Full Text PDF 目次へ戻る