Letter 遺伝:翻訳のエピジェネティックな調節により隠れていた遺伝的変異が現れて複雑な形質が生じる 2004年9月9日 Nature 431, 7005 doi: 10.1038/nature02885 表現型の可塑性と隠れていた遺伝的変異の出現は、どちらも新しい形質の進化やその生き残りに影響を及ぼすが、その分子機構はほとんどわかっていない。酵母のプリオン[PSI+]は1個の因子だが、形質の進化と生き残りの両方に甚大な影響を及ぼす可能性がある。[PSI+]はよく保存されたタンパク質性の遺伝因子で、翻訳終結因子Sup35pのコンフォメーションと機能の変化によって生じ、母親から子孫へと伝達される。細胞から[PSI+]を取り除くと、さまざまな生育条件のもとでの細胞の生存状況が変化し、異なった遺伝的背景のもとでさまざまな表現型が生じる。今回、この表現型の多様化を説明する3種類の仮説を検証し、調べた形質すべてに[PSI+]を介した終止(ナンセンス)コドンの読み過ごしが起こっていることを明らかにする。分析した表現型は遺伝的に複雑であり、遺伝子の混ぜ合わせによって[PSI+]に依存する表現型が、[PSI+]がなくても安定に維持される形質に変わることがたびたび起こったのは注目すべきである。つまり[PSI+]は、多様な条件のもとで一時的な生存を可能とするような有利な影響を及ぼし、その後の遺伝的変化によって新しい形質が固定される確率を高めている。[PSI+]は遺伝子型と表現型との関係に全体的な影響を及ぼすエピジェネティックな機構として、表現型の可塑性という概念の枠組みを広げるものであり、複雑な形質を一段階で獲得する機構を提供し、当初一時的なエピジェネティックな形質であったものを遺伝的に同化する経路を与えている。 Full Text PDF 目次へ戻る