Letter 医学:S6K1欠損はインスリン感受性を増大させる一方で年齢および食餌による肥満を防ぐ 2004年9月9日 Nature 431, 7005 doi: 10.1038/nature02866 肥満からインスリン作用障害につながるシグナル伝達機構の解明は、糖尿病治療の戦略の開発に重要である。最近、S6キナーゼ1(S6K1)を欠損するマウスは、低インスリン血症、耐糖能異常およびβ細胞の大きさの減少をきたすことが示された。S6K1は栄養素およびインスリンのシグナルを統合する働きを持つ、哺乳類ラパマイシンターゲット(mTOR)のエフェクターである。しかし、S6K1欠損マウスの血糖値は空腹時にも正常に保たれていることから、インスリン感受性の亢進が示唆され、年齢や食餌の作用によりそうしたマウスの代謝はどのように変化するのかという疑問が生じてくる。今回我々は、S6K1欠損マウスが、β酸化の増大により肥満から保護されていることを報告する。しかし、高脂肪食下では、グルコースや遊離脂肪酸レベルはS6K1欠損マウスにおいても上昇しており、インスリン受容体は脱感作される。それにもかかわらず、S6K1欠損マウスにおけるインスリン感受性は保たれているが、それはおそらくS6K1からインスリン受容体基質1(IRS-1)への負のフィードバックループが消失し、インスリン抵抗性に関与しているS307およびS636/S639部位のリン酸化が鈍化しているからである。さらに、高脂肪食下にある野生型マウスや、2つの遺伝性肥満モデルであるK/K Ayやob/ob(別名Lep/Lep)マウスにおいても著明なS6K1活性の上昇がみられるが、S6K1欠損マウスとは異なってIRS1 S307やS636/S639のリン酸化が増加している。したがって、栄養素過剰状態においては、S6K1はインスリンのシグナル伝達を負に調節している。 Full Text PDF 目次へ戻る