トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、重要な腫瘍抑制機能を制御する多能性サイトカインであるが、これに反応しない癌細胞も少なからず存在する。急性前骨髄球性白血病(APL)の前骨髄球性白血病(PML)腫瘍抑制因子は、核内のPML構造体に集まっているが、機能不明の細胞質PMLイソ型の存在も報告されている。本論文では、細胞質PmlがTGF-βシグナル伝達の必須モジュレーターであることを示す。Pml欠失初代細胞は、TGF-β依存性の増殖停止、細胞老化の誘導、アポトーシスに耐性を示す。この細胞では、TGF-βシグナル伝達タンパク質Smad2およびSmad3のリン酸化および核内移行にも異常があるほか、TGF-β標的遺伝子の誘導が損なわれている。細胞質Pmlの発現はTGF-βによって誘導される。また細胞質PMLは、Smad2/3およびSARA(Smad anchor for receptor activation)と物理的に結合し、Smad2/3とSARAの結合、ならびにSARAおよびTGF-β受容体の初期エンドソームにおける蓄積に必要である。APLのPML-PARα癌タンパク質は細胞質PMLの機能と拮抗でき、またAPL細胞では、Pml欠失細胞の場合と類似のTGF-βシグナル伝達の異常がみられる。これらの知見から、細胞質PMLが重要なTGF-β調節因子であることが明らかになり、発癌過程におけるTGF-βシグナル伝達の調節障害の関与が示唆される。