Letter 神経:識字障害の生物学的異常には文化による制約がある 2004年9月2日 Nature 431, 7004 doi: 10.1038/nature02865 発達性失読症とは、知能や学業に異常がないにもかかわらず識字能力に重い障害をもつ場合をいう。アルファベットのような表音文字の識字障害には、左側頭頭頂領域の機能異常が伴う。これらの脳領域は、音素の分析と書かれた表象の音韻単位への変換(書記素−音素変換)、すなわち文字の認識に介在する2つの中心的な認識過程を実行する。また、各言語の失読症には文化の多様性を超えて共通の生物学的基盤があると考えられてきた。今回、識字障害のある中国人の児童と健常な対照児童とに機能的磁気共鳴画像法を適用したところ、中国語(表音文字でなく表意文字体系を用いる言語)の識字障害には、左中前頭回の機能異常が関係していることがわかった。中国語の識字障害で見られる欠陥には2種類があり、1つは文字図形(表記された文字)から音節への変換と関連し、もう1つは表記された文字と意味との対応づけに関連している。左中前頭回はその両方の過程をともに仲介しており、中国語の円滑な読みの中枢、つまり言語と空間の作業記憶において、書かれた文字についてのさまざまな情報を関連づけて統合する脳部位として機能する。この知見は、失読症の病態生理学的基盤解明の手がかりとなり、識字障害の生物学的異常が一様な起源ではなく、文化によって異なることを示唆するものである。 Full Text PDF 目次へ戻る