Letter 細胞:神経栄養因子受容体TrkBによるアノイキスの抑制と転移の誘発 2004年8月26日 Nature 430, 7003 doi: 10.1038/nature02765 転移は癌の悪性度にかかわる主要な要因で、しばしば癌治療失敗の原因となる。アノイキス(細胞とマトリックスの相互作用が失われた結果起こるアポトーシス)は、転移の生理的障壁として働くといわれているが、癌細胞はアノイキス耐性のおかげで、全身を循環している間も生存でき、離れた臓器での二次腫瘍形成が促進されるのではないかと考えられている。我々は、転移に関係する癌遺伝子を同定する目的で、アノイキスの抑制だけを基準に、一律にゲノム全域を対照として機能的スクリーニングを行った。本論文では、悪性でない上皮細胞のカスパーゼを介したアノイキスを強く特異的に抑制する因子として、神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体TrkBを同定したので報告する。TrkBは、ホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ/プロテインキナーゼB経路を活性化することにより、懸濁液中で生存、増殖が可能な細胞凝集体の形成を誘発する。マウスでは、これらの細胞が成長の速い腫瘍を形成し、リンパ管や血管に浸潤して離れた臓器に定着する。TrkBにアノイキス抑制作用があるのは、転移巣では、小規模な血管への浸潤であれ、大きな腫瘍結節であれ、アポトーシスを起こす細胞がほとんどないことともよく整合する。今回の結果は、TrkBに強力な癌誘発作用があることを示しており、癌の転移能を助長している可能性のある特異的な生存促進作用の存在を明らかにするものである。このことから、TrkBを過剰に発現するヒト腫瘍の悪性度が高い理由が説明できるかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る