Letter 海洋:遍在性珪藻プランクトンの大量発生ではアルデヒドによって橈脚類の加入が抑制される 2004年5月27日 Nature 429, 6990 doi: 10.1038/nature02526 栄養に富む水中環境では、成長・増殖の周期は珪藻類の大量発生(ブルーム)で始まり、これは捕食されない細胞や植物体破片の大量沈降で終わりを迎える。これらの大量発生に対する捕食圧が低いのは、越冬した橈脚類個体群が珪藻類の大量発生に時間的に追いつけないためだとされてきた。これとは別に、珪藻類の優占種が自身の捕食者の繁殖成功度を低下させるとする説明もなされており、我々はこれを検証した。ありふれた越冬性橈脚類の幼生発生について、世界中の海域に遍在し大量発生の初期に現れる珪藻種を食べた場合と、大量発生後の典型種である渦鞭毛藻類を食べた場合とで比較した。母親とその幼生の双方に問題の珪藻類を餌として与えた幼生ではすべて、発生が停止した。幼生の段階で餌を渦鞭毛藻類に切り換えても、死亡率は高いままだった。細胞破砕ののち数秒以内に活性化される酵素類により脂肪酸前駆物質から切り出されて生成したアルデヒドが、催奇作用を発揮したのである。この仕組みは油断ならないもので、捕食者の摂食を抑止するのではなく新規個体加入を損ない、春早くに現れる越冬個体の次世代の集団サイズを抑える。このように世代をまたぐ植物と草食動物の相互作用から、出現が予測可能で有用な食糧資源となるはずの春季珪藻類の大量発生が、毎年、海洋動物プランクトンによって効率よく利用されない理由が説明できるであろう。 Full Text PDF 目次へ戻る