計量学:229Thに同期した原子核時計
Nature 658, 8137 doi: 10.1038/s41586-026-11122-1
原子時計は、時間と周波数を物理学で最も精密に測定できる量にし、SI秒を実現するマイクロ波標準から、かつてない精密さを持つ光時計へと発展を遂げた。原子核時計は、周波数基準を電子遷移から核遷移へ移行させるものであり、トリウム229(229Th)における、他に類を見ないほど低エネルギーでレーザーによる励起が可能な核異性体遷移は現在、小型でロバストな計時と、基礎物理学の高感度な検証の実現に向けた最も実用的な道筋を提供している。このような時計を実現するには、229Th核共鳴の分光法を、トレーサブルな発振器の制御に用いる安定した周波数弁別器に転換する必要がある。本研究で我々は、波長148.4 nmの連続波・狭線幅真空紫外(VUV)レーザーを、229Th:CaF2結晶中の、分光学的に分離された温度感受性の低い核遷移に安定化させることにより、229Th原子核時計を実証した。カドミウム蒸気中の四光波混合によって生成した出力10 μWのVUV光源と、光電管を用いた周波数変調吸収信号の読み出しにより、高速で信号対雑音比の高い核遷移周波数弁別器が実現された。この時計は、平均化時間τに対して5 × 10−13/√τ/sの分数周波数不安定度に達した。独立に作製した2つの結晶で測定した時計遷移周波数は10−13の水準で一致し、別の229Th:CaF2結晶で行われた以前のVUV周波数コムによる測定結果とも整合する。これらの結果は、レーザーで操作する原子核を実際に動作する時計の基準として確立するもので、小型原子核時計、原子核量子センサーおよび基礎物理学の精密検証に向けた、再現性のある固体プラットフォームを提供する。

