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微生物学:消失しつつある腸内微生物は先史時代にヒトと共に世界規模で移動した
Nature 658, 8137 doi: 10.1038/s41586-026-11106-1
腸マイクロバイオームは健康に不可欠であり、生活様式による影響を強く受ける。非工業化社会の集団で一般的に見られる多くの微生物は、工業化社会の集団では消失しつつあるか、既に絶滅している。どの微生物がヒトの腸に長期にわたって常在し、ヒトと共進化してきた可能性があるかを調べることは、微生物の生物多様性の喪失がヒトの健康にどのように影響するかについての手掛かりをもたらし得る。しかし、微生物進化の遺伝的な複雑さと腸マイクロバイオーム組成の可塑性によって、こうした長期的な関係の進化史を解明することは困難であった。今回我々は、ボリビアの園耕民であるチマネ族(Tsimane)を対象に高深度メタゲノム塩基配列解読を実施し、チマネ族の腸マイクロバイオームを、タンザニアの狩猟採集民であるハッザ族(Hadza)の腸マイクロバイオームと比較した。祖先が分かれてから数万年が経過しているこの2集団では、1231種の微生物が共通しており、その大半は工業化社会の集団ではまれであるか、存在していなかった。共通する種のうち636種について集団遺伝学的解析を行ったところ、先史時代にヒトと共に移動したことと整合する、微生物の分岐および遺伝子流動のパターンが明らかになった。また、推定された分岐時期は、ヒトの「出アフリカ」、および南北アメリカ大陸への移住の時期と、おおむね合致していた。我々の知見は、多様な腸マイクロバイオームがヒトと共に世界各地へと移動し、数千年にわたって存続してきたことを示している。しかし、これらの種の多くは現在、工業化社会の集団から消失しつつあり、それがヒトの健康に及ぼす影響は依然として不確かである。

