Article

ナノ流体工学:極端な閉じ込め条件下における水の水素結合

Nature 658, 8137 doi: 10.1038/s41586-026-10858-0

極端な閉じ込め条件下にある流体や界面近傍の流体は、同じ流体のバルク状態とは異なる分子構造や分子間結合を示す。光学的振動分光研究によって、界面にある水や閉じ込められた水では、分子内O–H伸縮振動の周波数が変化し得ることが示されている。この周波数は、分子間水素結合の変化を敏感に反映するスペクトル上の指標である。しかし、閉じ込められた水を分子間力や表面力が作用する長さスケールで実験的に調べることは、依然として困難である。今回我々は、個々のカーボンナノチューブ(CNT)内に閉じ込められた水の水素結合を、分子レベルで直接観察した結果を報告する。この観察は、ナノスケール分解能のin situ振動電子エネルギー損失分光法(vEELS)によって可能になった。直径のより大きなCNT内の水は、バルク水に見られる水素結合したO–H振動を示したが、直径がより小さい場合には、水蒸気や疎水性表面近傍に位置する水に見られる遊離のO–H伸縮振動の周波数付近までの高周波数側へのシフトが見られた。これは、高度に分散した、水素結合が形成されない環境を示している。量子振動子に基づく理論解析によって、観察されたスペクトルの特徴が局所的な水素結合配置と結び付けられ、この結果は実験観察の結果と整合する。さらに、極低温実験によって、閉じ込められた水の複雑な構造相転移に関する知見がもたらされた。今回の研究は、閉じ込め条件下における水素結合の量子的かつ動的な性質と、閉じ込められた流体の分子レベルの構造と結合を解明することがもたらし得る影響を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度