神経免疫学:細胞内の補体H因子はCNS炎症中にニューロンを保護する
Nature 658, 8136 doi: 10.1038/s41586-026-10981-y
神経変性は、中枢神経系(CNS)の最もありふれた慢性炎症性疾患である多発性硬化症(MS)において、障害をもたらす主要な駆動因子である。眼内の不均一なニューロン集団である網膜神経節細胞(RGC)は、MSで変性を起こすため、炎症性損傷に対するニューロンサブタイプ特異的なレジリアンスを研究するモデルとなる。しかし、脆弱性の違いの根底にあるニューロン内因性機構については、まだ明らかにされていない。本研究で我々は、ニューロンの細胞内補体H因子(CFH)が神経保護的役割を果たしていることを明らかにする。我々は、MSのドナーと対照群ドナーから採取したRGCについて単一核RNA塩基配列解読解析を行い、CFHの発現が、RGCの変性に対する内因性レジリアンスと強く相関することを見いだした。機構的には、網膜およびその他のCNSニューロンで、炎症性ストレスや酸化ストレスに応答してCFHの発現が誘導され、そこでは活性酸素種の蓄積と脂質過酸化が抑えられた。CFHは、ニューロンがフェロトーシスを起こす際の脂質過酸化の主要な部位である小胞体に局在した。CFHの保護活性は、C末端のSCR20ドメインに依存する一方、CFHの分泌には依存せず、補体成分C3が存在しない場合にも維持された。これらの知見は、ニューロンにおけるCFHの非カノニカルな細胞内機能を明らかにしている。まとめると我々の結果は、CFHがマウスとヒトのCNS全域におけるニューロンのレジリアンスの主要なメディエーターであることを明らかにし、炎症性神経変性についての機構的手掛かりを提示している。これらの知見は、MSの治療や、より広範には神経保護にも示唆を与える。

