Article

進化ゲノミクス:参照ゲノムと化石に基づくコウモリの科レベルの系統発生と生物地理の改訂

Nature 658, 8134 doi: 10.1038/s41586-026-11007-3

コウモリは、哺乳類の中でも特異な存在であり、動力飛行と喉頭反響定位を、疾患抵抗性、長い健康寿命、冬眠能力と共に独自に進化させてきた。しかし、コウモリの進化史と、これらの適応に関する理解には未解明の点が残されている。今回我々は、コウモリの全21科を網羅する103種について、42例の新規アセンブリを含む、ロングリードに基づく染色体レベルのゲノムアセンブリを解析した。対象範囲が拡大し、アセンブリ品質が向上したこのデータセットから、コウモリの新たな系統発生が明らかになった。我々は、サラモチコウモリ科(Myzopodidae)をヒナコウモリ上科(Vespertilionoidea)内で最も早く分岐した系統に位置付け、サシオコウモリ上科(Emballonuroidea)とヒナコウモリ上科が姉妹群であると特定することで、ヤンゴコウモリ亜目内の系統関係を解明した。我々の解析により、コウモリ類全体にわたるモザイク状の進化史が明らかになり、以前の系統解析研究で誤った結論が導かれた理由が説明された。染色体の祖先状態の再構築からは、祖先的なコウモリの染色体が26本であったことが支持された。我々は、先第四紀の44の化石種と、現生コウモリの大半の科を代表する種を含む、計65種の699形質からなる形態データセットを、中立的に進化するゲノム部位のデータと統合した。化石化出生–死亡解析および分散–絶滅–分岐進化解析の結果は、コウモリの起源、従ってその動力飛行の起源が、暁新世後期のヨーロッパにある可能性が高いことを示しており、アフリカ起源説と北米起源説が退けられた。化石絶滅属Vielasiaが最古のクレードである「Eochiroptera」内に位置付けられたことは、喉頭反響定位の進化がクラウン群コウモリの多様化に先行したことを示している。また、化石タクソンを含めた全証拠年代推定では、分子データのみによる分岐年代推定と比べて、化石記録のない基部系統の枝の長さが有意に短縮された。我々は、包括的なゲノムデータセットと形態データセットを統合し、革新的な手法で解析することにより、コウモリ生物学における長年の論争を解決するとともに、コウモリの進化史と形質の多様化について新たな知見を提供している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度