Article
計算物理学:コンホメーション遷移の生成的サンプリングによる時間スケールの制約の打破
Nature 657, 8133 doi: 10.1038/s41586-026-11025-1
タンパク質の折りたたみ、アロステリー、膜輸送といった分子の遷移は、生物学的機能の中核をなすが、そのシミュレーションが依然として極めて難しいことはよく知られている。これらの遷移は本質的にまれにしか起こらないため、標準的な分子動力学法で扱える範囲を超えている。一方、拡張サンプリング戦略は計算負荷が高く、結果に偏りをもたらす恣意的に選ばれたパラメーターや変数に依存することが多い。本研究で我々は、集団変数をあらかじめ定義することなく、許容できる計算コストで遷移経路を再構成する、コミッターの誘導を用いる生成的な経路サンプリングの枠組みであるGen-COMPASを提示する。Gen-COMPASは、構造的に妥当な中間標的構造を生成する雑音除去拡散確率モデルを、コミッターに基づくフィルタリングに結び付けることで、遷移状態を特定する。これらの中間構造を出発点とする短時間の無バイアスシミュレーションによって、ナノ秒からサブマイクロ秒の累積サンプリング時間スケールにおいて遷移領域のアンサンブルが得られた。従来の手法では、これを得るために桁違いに多くのサンプリングが必要となる。Gen-COMPASをミニタンパク質から五量体のリガンド作動性イオンチャネルに至るさまざまな系に適用したところ、あらかじめ定義された反応座標や機構に関する事前知識なしに、既知の端点構造のみからコミッター、遷移状態、自由エネルギー地形が復元された。これにより、従来のシミュレーション手法では扱うことが困難だった生体分子系について、その機構に関する知見を得るための、計算上実行可能な道筋がもたらされた。

