腫瘍生物学:Rb駆動型転写が乳がんにおいてRbの腫瘍抑制効果を制限する
Nature 657, 8131 doi: 10.1038/s41586-026-10886-w
網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質は、E2F転写因子を抑制して細胞周期の進行を停止させる腫瘍抑制因子として最もよく知られている。ホルモン受容体陽性(HR+)乳がんでは、CDK4/6阻害剤がRbのリン酸化を防ぐことによってRbを活性化するため、現在の内分泌療法レジメンにおける重要な構成要素となっている。薬理学的に活性化したRbが、細胞周期停止以外の面で、どのようにしてクロマチンをリモデリングし、転写に影響を及ぼすのかはまだよく分かっていない。今回我々は、CDK4/6の阻害が低リン酸化状態のRbをプロモーターとエンハンサーへ再分布させることを示す。予想通り、Rbは、細胞周期遺伝子のプロモーターに結合して転写を抑制したが、他の部位では意外にも、エストロゲン受容体(ER)が豊富な転写ハブに組み込まれ、エストロゲン応答性遺伝子の発現を促進した。CDK4/6の阻害は、乳がん細胞、患者由来異種移植片、HR+乳がんの臨床試料では、ERの標的遺伝子の発現をRb依存的に亢進させた。この再プログラム化にはKDM5Aが部分的に関わっており、KDM5AとRbの相互作用が、これらの座位における遺伝子調節に寄与している。重要なことに、このRb駆動型ER転写プログラムの構成要素が細胞増殖を促進する。内分泌療法感受性腫瘍では、この作用は抗エストロゲン療法で打ち消すことができ、これが治療の相乗効果の説明となる。ESR1変異乳がんのような内分泌療法抵抗性の場合には、このプログラムが持続し、このため、CDK4/6阻害の治療効果が制限される。これらの知見は、Rbを、細胞周期の停止を強制する一方で、自らの腫瘍抑制機能に拮抗するプログラムも活性化し得る、二重機能性の転写調節因子として捉え直すものである。

