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古気候学:最終氷期極大期に存続していた比較的温暖な深層水の形成
Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-10012-2
最終氷期極大期(2万3000〜1万9000年前)は、低い温室効果ガス濃度と、北米とヨーロッパの大半を覆う大陸氷床を特徴としていた。従って、氷期の気候は、全球平均気温がより低くて、赤道から極方向への温度勾配がより大きく、その結果として偏西風がより強かった可能性が高いなど、現在とは大きく異なっていた。しかし、こうした氷期の気候強制力の下での北大西洋深層の状態は、特に深海の温度と塩分濃度がほとんど絞り込まれていないためによく分かっていない。今回我々は、氷期の北西大西洋深層(水深1.5 km以深)の温度は約0~2℃(現在よりもわずか1.8 ± 0.5℃〔2 s.e.〕低い)で、海洋全体の変化を考慮すると、海水のδ18Oは0.3 ± 0.1‰〔2 s.e.〕高く、これは、亜寒帯の北東大西洋とノルディック海を経由して亜熱帯の表層までさかのぼれることを示す。まとめると我々の水文データは、北西大西洋深層の温度構造と同位体構造を明らかにするとともに、最終氷期極大期に、比較的温度が高くおそらく塩分濃度の高い北大西洋深層水が持続的に生成されていたことを示唆している。今回の結果はさらに、将来の気候変動の予測に用いる地球システムモデルの基準を得るための最新の制約条件を提供している。

