量子シミュレーション:78キュービットプロセッサー上でのランダムな多重極駆動による初期熱化
Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-09977-x
時間依存性の駆動は、非駆動系には存在しない非平衡多体系現象を実現するものとして有望である。駆動により誘起される加熱は通常、系を不安定化させるが、この加熱は、高周波領域では周期的な(フロケ)駆動を用いることによってパラメトリックに抑制することができる。高度に制御可能な量子シミュレーターが非周期的な駆動系において加熱をどの程度抑制できるかは、依然としてほとんど分かっていない。今回我々は、78キュービット超伝導量子プロセッサー「荘子2.0」を使用して、調整可能な加熱率を有する多体系において、n重極時間相関を特徴とし、構造化されたランダムプロトコルにより駆動される、長寿命のプレサーマル相を実験的に観測したことを報告する。我々は、粒子不均衡と、部分系のエンタングルメントエントロピーの両方を測定することによって、1000回を超える駆動サイクルにわたる加熱過程全体をモニタリングし、プレサーマルプラトーの存在を観測した。プレサーマル寿命は、駆動周波数による方法と多極子次数による方法で「二様に調整可能」であり、普遍的なスケーリング指数2n + 1で周波数とともに代数的に増加する。我々は、異なる部分系上で量子状態トモグラフィーを使用して、不均一な空間的エンタングルメント分布を実証し、エンタングルメントのスケーリングが面積則から体積則にクロスオーバーすることを観測した。二次元配置した78個のキュービットと137個のカプラーを用いる場合、平衡状態から遠く外れた加熱力学の全体は、テンソルネットワークによる数値解法を使用するシミュレーションでは対応できない。今回の成果は、古典シミュレーションが非常な難題に突き当たる領域において、超伝導量子プロセッサーが、駆動系における普遍的なスケーリング則や非平衡物質相を探る強力なプラットフォームとなることを浮き彫りにしている。

