移植免疫学:ブタからヒト脳死患者への腎臓異種移植の生理と免疫
Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-09847-6
遺伝子改変ブタ腎臓の異種移植は、末期腎疾患患者への移植用腎臓の不足に対する解決策となる。今回我々は、α1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GGTA1)をノックアウトした(GTKO)ブタからのブタ腎臓および胸腺自家移植片を、臨床利用が認められている免疫抑制治療によって腎摘出したヒト脳死患者へと移植し、CD40阻害やそれ以上の遺伝子操作は行わずに、あらかじめ予定した61日間の研究のために遺体を維持した。その結果、血行動態と電解質の安定、透析非依存性が達成され、術後10日目(POD10)の生検では、糸球体へのIgMおよびIgAの沈着、初期の補体成分の活性化、メサンギウム融解が認められ、腎機能は安定で、タンパク尿はないことが明らかになった。このような表現型は、同種移植では見られない。POD33には血清クレアチニンが急増し、それに伴って抗体が関与する拒絶反応が見られ、ドナー特異的IgGが増加した。血漿交換、補体C3およびC3bの阻害、ウサギ抗胸腺細胞グロブリン(rATG)投与によって、異種移植片拒絶反応は完全に抑えられた。異種移植後、既存のドナー反応性T細胞クローンが循環血中で次第に拡大してエフェクターの転写プロファイルを獲得し、このようなT細胞クローンは、POD33のrATG投与前の拒絶された異種移植片でも検出された。この研究は、ブタからヒトへの腎臓異種移植を長期間にわたって生理学的・免疫学的に追跡し、感染症を監視した結果を提示するとともに、著しい免疫抑制下にもかかわらず、既存の異種反応性T細胞と未知のエピトープで誘導された抗体が大きな問題となることを示している。同時に、最小限の遺伝子編集を行ったブタの腎臓に、ヒトの生命維持に重要な生理機能を長期にわたって助ける力があることを実証した。

