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移植免疫学:脳死したヒトへの腎臓異種移植のマルチオミクス解析

Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-09846-7

臓器不足は移植における大きな問題であり、遺伝子編集されたブタ臓器は有望な解決策の1つとなっている。遺伝子編集を行っても、異種移植後の免疫反応には移植失敗を引き起こす可能性が依然として含まれている。今回我々は、ブタからヒトへの腎臓異種移植で起こる免疫学的応答を理解するために、脳死患者(死亡者)である1人のレシピエントにおける61日間の過程を通じて、異種移植片と宿主の血液についての大規模なマルチオミクスプロファイリングを行った。血液の形質芽球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞は、術後10日目(POD10)から28日目(POD28)の間に増加し、これはIgGおよびIgAのB細胞クロノタイプの拡大と一致していて、その後POD33に生検で抗体関連型拒絶(AMR)が確認された。ヒトT細胞の頻度はPOD14から増加し、血液および異種移植片でPOD33とPOD49の間にピークに達した。これはT細胞受容体の多様化、TRBV2およびTRBJ1に限定されたクロノタイプの拡大、それにPOD49でのAMRと細胞が媒介する拒絶が組み合わされた組織学的証拠と一致する。POD33では、この移植片中で最も豊富なヒト免疫細胞集団はCXCL9+マクロファージであり、これはインターフェロンγが駆動する炎症とヘルパーT細胞による1型免疫応答と一致していた。活性化されたブタ常在マクロファージと浸潤しているヒト免疫細胞との相互作用の証拠も得られた。異種移植片組織では、POD21からPOD33にかけて、S100A6SPP1(別名オステオポンチン)、COLEC11の発現を特徴とする、尿細管および間質の繊維化促進性の損傷が見られた。プロテオームプロファイリングから、ヒトおよびブタの補体の活性化と、AMR治療(補体を阻害する)後にヒト補体成分が減少したことが明らかになった。まとめるとこれらのデータは、ブタ腎臓に対するヒト免疫応答の分子レベルでの組織化を記述しており、異種移植片の生存を改善するための有望な免疫調節性標的を示している。

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