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がん:肺腺がんの進化にLINE-1が果たす役割を解明

Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-09825-y

肺がんの進化を理解することは、その増殖を阻止するための手段を特定することにつながる。今回我々は、1024例の肺腺がん(LUAD)について、全ゲノムの高深度塩基配列解読とマルチオミクスデータを組み合わせて全体像の解析を行い、多様なクローン構造を持つ542のLUADを特定した。このグループでは、喫煙曝露、祖先系、性別に基づいて分岐した進化軌跡を観察した。喫煙者のLUADでは、KRAS中にタバコに関連するC:G>A:Tのドライバー変異が多数見られ、サブクローンの多様化が短期間に起きていた。一方、一度も喫煙したことのない人(以降、喫煙未経験者と呼ぶ)のLUADでは、コピー数変化とSBS5およびSBS40aの変異シグネチャーを伴うEGFR変異が初期に起きていた。EGFR変異を持つ腫瘍は潜伏期間が長く、特にヨーロッパ系の女性でその傾向が強かった。アジア系の喫煙未経験者の腫瘍は、クローン進化が短期間で進行した。重要なことに、変異シグネチャーID2は、これまで認識されていなかったLUAD進化機構のマーカーであることが分かった。ID2を持つ腫瘍は、短い潜伏期間を示すとともに、LINE-1(long interspersed nuclear element-1、以下L1)プロモーターの脱メチル化と結び付いた高いL1レトロトランスポゾン活性を示した。これらの腫瘍は、ゲノム不安定性、低酸素スコアの上昇、低いネオアンチゲン負荷、転移傾向、低い全生存といったアグレッシブな表現型が見られた。再活性化したL1のレトロ転移による変異誘発は、KZFPファミリーに属する転写因子ZNF695の調節などを介して、おそらく変異シグネチャーID2に関与している。LUAD進化の複雑な特性は、スクリーニングや治療計画に対する課題と機会の両方を作り出す。

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