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進化学:遺伝子重複の年代推定が明らかにする真核生物の進化的組み立て

Nature 650, 8100 doi: 10.1038/s41586-025-09808-z

生命の歴史において、真核生物の起源は形成的だがあまり理解されていない事象である。真核生物の誕生(eukaryogenesis)に関して現在提唱されている仮説には、主に、ミトコンドリアの内部共生と他の真核生物的な新規性の獲得のタイミングにおいて相違がある。そうした仮説の見極めは、真核生物誕生の過程の中間段階を代表する現生系統が存在しないため、これまで困難であった。一方、真核細胞の機能には、真核生物誕生の過程で重複事象によって生じた遺伝子に依存しているものが多い。そのため、これらの重複の時間的関係から、真核細胞の進化的組み立てにおける段階の順序に関して手掛かりを得ることができる。今回我々は、緩和分子時計を用いて、真核生物誕生の過程が中太古代から後期古原生代にわたっていたことを示す。我々は、この年代枠の中でそれらの遺伝子重複のタイミングの年代を推定し、真核生物宿主の細胞は、ミトコンドリアの内部共生以前に、既に複雑な細胞の特徴を備えていたことを明らかにした。こうした特徴には、複雑な細胞骨格、メンブレントラフィック、細胞内膜、ファゴサイトーシス装置、核が含まれ、これらはいずれも30億~22億5000万年前に生じ、その後でミトコンドリアの内部共生が起きたことが示された。これらの結果によって、真核生物誕生におけるミトコンドリア先行シナリオが退けられ、代わりに、真核生物の特徴の組み立てについて、アーキアが複雑化した後にミトコンドリアが取り込まれるという順序が支持された。複雑な宿主アーキア細胞という我々の推論は、10億年以上にわたってほぼ無酸素状態にあったと考えられる海洋での栄養共生の適応的利益に関する仮説とも整合する。

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