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発生生物学:TGFβシグナル伝達の適時阻害が脊索を誘導する

Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08332-w

脊椎動物の体の形成では、胚後部に位置する前駆細胞から、体幹組織が協調的に生成されることが必要である。多能性幹細胞を用いたin vitroモデルでは、この過程のさまざまな特徴が再現されているが、特に周囲の組織のパターン形成を行う脊索(脊索動物を決定付ける特徴)など、重要な構成要素が欠けている。そのため、現在のヒト体幹形成モデルでは、脊索シグナル依存的な細胞タイプが存在しない。今回我々は、ニワトリ胚の単一細胞トランスクリプトーム解析を行い、分子的に区別される前駆細胞集団と、それらの空間的な構成をマッピングした。そしてこのマップに基づいて、分化中のヒト多能性幹細胞が体幹細胞タイプの典型的な空間的構成を作り出す仕組みについて調べた。その結果、YAPの不活性化が、FGFを介したMAPKシグナル伝達と共にWNT経路の活性化を促し、TBXT(別名BRA)の発現を誘導することが見いだされた。さらに、WNTによって誘導されるNODALおよびBMPのシグナル伝達を適時阻害することで、脊索細胞を含むさまざまな組織タイプの割合が調節されることが分かった。これにより、形態形成運動を経て脊索と腹側の神経組織および中胚葉組織を持つ細長い構造体を形成する、ヒトの体幹発生の三次元モデルの作成が可能になった。我々の知見により、脊椎動物の脊索形成の根底にある機構についての手掛かりが得られ、ヒト体幹発生のより包括的なin vitroモデルが確立された。これは、生理学的に妥当な環境下での組織パターン形成に関する今後の研究のための道を開くものである。

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