分子生物学:シロイヌナズナのCENH3クロマチンを標的としたレトロトランスポゾンのセントロメア特異的挿入
Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08319-7
脊椎動物から植物にわたる生物において、セントロメアの主な構成要素は急速に進化する反復配列であり、これらには縦列型反復配列(TR)や転移因子(TE)が含まれる。また、これらの配列はセントロメア特異的なヒストンH3(CENH3)を持つ。最近、ヒトとシロイヌナズナ(Arabidopsis)でセントロメアの完全な構造決定が完了し、セントロメアのTR領域内で、頻繁にレトロトランスポゾンが組み込まれたり、排除されたりすることが示唆された。セントロメア配列の急速な進化というパラドックスに「セントロメア親和性の」レトロトランスポゾンが及ぼす影響は大きいにもかかわらず、セントロメアを標的とする仕組みは、どの生物においてもほとんど解明されていない。今回我々は、LTR(長い末端反復配列)型のレトロトランスポゾンTy3とTy1が、シロイヌナズナ属の種のセントロメアのTR領域内で頻繁に入れ替わっていることを示す。さらに、Ty1/Copia型因子であるTal1(Arabidopsis lyrataのトランスポゾン1)が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のCENH3が分布している領域に新規に挿入されることと、CENH3の分布領域を本来の領域より拡大するとTal1が組み込まれる領域が広がることを明らかにした。キメラTEの挿入スペクトルを調べたところ、標的とするクロマチンの対照的な特異性(セントロメアか、遺伝子の多い領域か)の原因となる重要な構造上の差異が判明した。このような特異性は、これらのTEの進化の間に何度も入れ替わってきている。これらの知見から、真核生物のゲノム全体にも大きな意味を持つ、TEを介した急速なセントロメア進化にセントロメアのクロマチンが及ぼす影響の大きさが明確になった。

